オーガスタス・レオポルド・エッグ
19世紀のイギリスで、妻の不倫が発覚した瞬間を描いた作品です。
一見すると裕福で幸せそうな家庭ですが、夫が手にした一通の手紙によって、その平穏な暮らしは崩れようとしています。
夫の足元には、妻の愛人を描いた小さな肖像画が踏みつけられています。妻は床に崩れ落ち、許しを求めるように両腕を広げています。
一方、部屋の片隅では二人の娘がトランプの家を作っています。しかし、そのカードの家も崩れかけており、家族の未来を暗示しているようです。
実は、この絵にはほかにも多くの象徴が隠されています。
床に落ちた半分のリンゴは、聖書に登場するアダムとイブの罪を連想させるものです。
さらに、壁にはアダムとイブの堕落を描いた絵と、難破船を描いた絵が飾られています。どちらも、この家族に迫る悲劇を暗示していると考えられています。
そして、この作品には驚くべき続きがあります。
実は『過去と現在』は、全部で3枚からなる連作なのです。
2枚目の絵では、それから5年後の姉妹の姿が描かれています。
父親はすでに亡くなり、母親も家を追われてしまいました。成長した二人の娘は、薄暗い部屋で寄り添いながら悲しみに耐えています。
そして3枚目には、家を追われた母親の姿があります。
かつて裕福な家庭で暮らしていた彼女は、今ではロンドンの川沿いのアーチの下で、幼い子どもを抱えて身を寄せています。
2枚目と3枚目には同じ位置に月が描かれており、離れ離れになった母と娘たちが、同じ夜を過ごしていることを示しています。
この3枚の絵は、1858年にロイヤル・アカデミーで発表されました。当時のイギリス社会では、女性の不倫に対して非常に厳しい道徳観があり、この作品も大きな社会的問題を扱った絵画として知られています。
最初の絵で無邪気にカードの家を作っていた二人の娘。
その小さな家が崩れる瞬間、彼女たちはまだ、自分たちの未来まで大きく変わろうとしていることを知らなかったのでしょう。
Past and Present, No. 1 (1858)
Augustus Leopold Egg
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